楽器の構成
花輪ばやしのお囃子は中太鼓、打太鼓、篠笛、三味線、摺り鉦で構成されています。
花輪ばやし 全12曲の紹介
花輪ばやしの伝承曲は現在全12曲ありますが、「平安時代末期ごろ京都から花輪地方に来た貴族の笛に後から摺り鉦、太鼓、三味線がついて祭ばやしになったもの」、「江戸時代中期から幕末にかけて花輪地方で作曲されたもの」、「幕末頃、当時流行の演芸囃子を取り入れ編曲したもの」の三通りあると考えられています。
また、10町にはそれぞれ得意曲というものがあります。
本囃子(ほんばやし)
本屋台囃子の略称。行進曲風で、昔、軍の士気を鼓舞するために作曲されたものでないかと言われ、伝承曲の中でも一番に親しまれた曲で、花輪ばやしと言えばこの曲と言われる程、代表的な曲です。
二本滝(にほんだき)
渓流が岩にせかれて二条となり、段々と落ちる滝の風情を表しています。二条の滝が一つになり滝壷に入るところを結びとしてあり、その間で笛と太鼓が掛け合いになっている、珍しい手法を取りいれた曲です。
◎新田町・旭町得意曲
霧ばやし(きりばやし)
この霧とは、朝霧にけむるの山野風情を表わしたものです。朝詰の帰途に多く演奏されることから「下りばやし」とも言われています。
元来、店舗が遅く緩やかに演奏されていたので間合いが難しく、笛や三味線、太鼓が合わせにくかったと言われています。
そのため、演奏の機会が少なかったのですが、現在のように1/2の歩行調子に変化させることで消滅の危機を免れました。
◎大町得意曲
羯鼓(かっこ)
「羯鼓」とは雅楽に用いられるつづみのような打楽器で、もともと中国で軍事用に使われていました。鹿角地方には全く存在していなかった楽器ですが、曲の名前として現在まで伝えられてきました。太鼓の打ち方によって、笛の妙味一層引き立つように組み合わされた曲です。
◎新町得意曲
宇現響(うげんきょう)
仏教の無量寿経に説かれている浄土の有様にある空にはいろいろな楽器が飛遊し、奏する人もいないのに妙音を発しているのだそうです。この曲はその様子を表現したものと言われています。花輪ばやしは仏教の影響が強く見られ、これらの曲は浄土教が盛んだった平安期の貴族が作曲、雅楽的なものが土台となっているものと思われます。
◎六日町・組丁得意曲
追込(おいこみ)
「追込」という曲名は多くの祭囃子の中に見られますが 、花輪の追込はどれにも似ていず、曲名だけを移入したものではないかと思われます。
幕末頃、地元で作曲されたといわれています。
◎谷地田町得意曲
不二田(ふじた)
不二田は永らく伝承されていませんでしたが、平成15年11月に、保存育成部をはじめとする有志により復元されました。
拳囃子(けんばやし)
ルーツは幕末頃に流行していた遊芸囃子でそれを取り入れ編曲したものと言われています。
◎舟場町得意曲
吉原格子(よしわらこうし)
拳囃子とおなじく、江戸の遊芸囃子の移入と見られ、その中の「篭丸」をスローテンポにしたもので、浴衣などによくある「吉原格子」の図柄を表現したものであるとされています。
◎舟場元町得意曲
矢車(やぐるま)
その昔お金持ちが「お伊勢参り」の際、笛の楽人を同行し、中京地方の曲を移入させたものと言われていますが、曲の表現が違うことから地元で作曲したものではないかと言われています。
◎横丁得意曲
シャギリ
地元で作曲された曲の1つで、年代的には「追込」「不二田」とほぼ同年代のものではないかと思われます。
他のほとんどの曲が笛で始まり笛で終わっていますが、この曲だけは、鉦で始まり鉦で終わっていて笛と太鼓はお供として演奏されています。
祇園(ぎおん)
この名称は仏典に現れる「祇園精舎」から来た言葉だと言われています。「祇園精舎」とは釈迦が晩年好んで居住された場所の名称です。非常に格調高い調べになっており、二本滝や羯鼓の作者と同一人物ではないかと見られています。